WhiteHouse

米国の不動産やインフラ資産投資、海外年金基金の売却益が非課税へ

2016年1月18日

長年、年金基金を含む海外機関投資家が米国の不動産へ投資し売却する際には、FIRPTAと呼ばれる課税規制の対象となり、税金支払い及び対応した投資ストラクチャリングのためのコストがかかっていたが、2015年12月、米国政府は海外の年金基金をFIRPTAの適用外として、米国内の年金基金と同様に非課税となる法案改革を行った。

 

FIRPTAとは?

1980年に制定されたUS Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980の略で、海外投資家が米国の不動産へ投資し売却益が発生するにあたり10%の源泉徴収が課税されるなど、海外投資家の米国での不動産投資の際の主要な制約の一つとなっていた。

 

今回のFIRPTA改革の主なポイント

■ 海外年金基金の不動産及びインフラなどへの、直接投資、パートナーシップによる私募ファンド投資、REIT投資といったストラクチャーでの資産および持ち分の売却益が非課税となる

■ FIRPTAの適用外となる海外年金基金には公的年金および企業年金も含まれる

■ その他の海外投資家による米国の不動産売却への源泉徴収税率は10%から15%へ増加

 

FIRPTAの適用除外となる海外年金基金の規定

FIRPTAの適用除外となる対象は適格海外年金基金と規定されている。
適格海外年金基金の主な条件は、
・ 米国外の法制度のもとで設立されており、拠点を持つ国の政府によって認可され、当該政府の税務機関への報告義務が毎年ある
・ 既存職員または退職者(受給者)への退職金および年金支払いのために設立された基金
・ 基金の資産または収益の5%を超える権利を持つ単独の受給者がいない
・ 当該国の法令によって、当該国内での収益に対して非課税または税金の優遇措置を受けている基金

 

上場REITの海外機関投資家の持ち分も規制緩和

今回のFIRPTAの改革では、上場REITへの規制緩和も盛り込まれており、いままで上場REITの5%以下の持ち分をもつ海外機関投資家は当該REITの売却益またはキャピタルゲイン配当は非課税となっていたが、非課税対象となる持ち分を10%以下まで引き上げる。

Manhattan sky

市場に与える影響は?

今回のFIRPTA改革により、今後海外の年金基金からの米国不動産への投資の起爆剤となると予測される反面、海外の保険会社などの他機関投資家は除外対象には含まれておらず、かつ海外投資家の資産売却に対する源泉徴収税率は従来の10%から15%へ増加されている事から、改革によるメリットとデメリット両方が予想される。
また、現在のところ間接投資の際のストラクチャーや階層ごとの適用範囲について明確な説明に欠けている部分もあり、詳細については今後の専門家等の意見や実例が待たれる。

 

当ニュースは一般的な市場情報についての解説であり、アスタリスクは内容の保証をせず、内容は将来変更される可能性があります。 またアスタリスクは何らかの税務上のアドバイスを行う意図はありません。実際の税務上のアドバイスや見解については税務の専門家へお訊ねください。

 

 本記事について
Edited & written by Yukihiko Ito (伊藤 幸彦)

本レポートは上記の資料、情報提供、関係者へのヒアリングをもとにAsterisk Realty & Placement Agencyが編集したものです。本レポートの複製および転載についてはAsterisk Realty & Placement Agencyを参照元として明記する事を条件に許可いたします。

お問い合わせ: info@japanplacementagent.com

 

 アスタリスクについて
弊社(アスタリスク)はグローバルな機関投資家向けにグローバル市場での不動産、インフラストラクチャー、関連PE投資の市場情報の提供・ご案内をしております。弊社ウェブサイトでは、不動産、インフラストラクチャー、PEを中心とした海外のオルタナティブ投資情報に関して情報発信を行っております。

ウェブサイト : https://japanplacementagent.com/

 

過去の関連リポートは以下リンクからご覧になれます

 

世界最大級の公的年金ノルウェーGPFG、不動産へのアセットアローケーションを15%へ拡大提言
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/norges-gpfg-real-estate/

欧州大陸 : 不動産投資についての考察 – M&G Real Estate
https://japanplacementagent.com/wp-content/uploads/2015/10/52eee65c138da3475162613beaf0518b.pdf

グローバル・コア不動産投資についての考察 – M&G Real Estate
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/global-core-real-estate-investment/

欧州QE (量的緩和) がもたらす欧州不動産市場へのインパクト – M&G Real Estate
https://japanplacementagent.com/blog/global-pension-fund/perspectives-the-impact-of-qe-on-european-property-markets/

長期インフレ連動型インカム – 英国ロング・インカム型不動産
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/long-income-real-estate-investment-uk/

英国の私募REIT(オープンエンドファンド)と不動産市場
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/uk-open-ended-funds/

インフレーション感応型資産としてのグローバル不動産
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/inflation-sensitive-asset/

ケベック州貯蓄投資公庫のオルタナティブ投資
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/caisse-de-depot-et-placement-du-quebec/

SWFレポート2013 / Sovereign Wealth Fund Report 2013
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/2013-sovereign-wealth-fund-report-2013/

ノルウェーSWF “オイルファンド” Government Pension Fund Global
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/norway-swf-government-pension-fund-global/

米イェール大学の基金運用事
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/yale-universitys-fund-management-case/

グローバル市場での不動産とは? 世界のトップ30の年金基金・SWFの投資動向
https://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/real-estate-investment-of-top-30-global-investors/

 

logo

株式会社アスタリスク
Asterisk Realty & Placement Agency
東京都千代田区紀尾井町3-29 グリュックハイム2003
Tel: 03-3263-9909
Fax: 03-3263-9908

※当レポートは情報提供を目的としたものであり、法的拘束力はありません。アスタリスクは、当レポートの内容に関する正確性および完全性を保証せず、その内容を随時変更することがあります。当レポートは金融商品の勧誘を意図したものでなく、市場に関しての情報提供を目的としたものです