グローバル市場での不動産とは?

本記事は弊社と英国の機関投資家向けメディアのPEREの共同記事です。
世界のSWFや公的年金のアセットアロケーションや運用手法の解説に加え、 アセットクラスとしての不動産へ焦点を当てた内容になります。

日本では20年前のバブル崩壊以来長期にわたり不動産の資産クラスとしての地位は失墜してきました。 2007年にピークを迎えたプチ・バブル期では、90年代からのバブル崩壊後の長く続いた低空飛行からの反動による短期的な高騰と、その後の世界経済の信用収縮からの『第2の教訓』を日本の年金基金をはじめとした機関投資家に与えました。

しかしながら、過去の記事でとりあげた20年間にわたり平均14%を超える収益を上げる米イェール大学が、不動産へ20%のアセットアロケーションをおこなっていることにも反映されるようにグローバル市場での地位は大きく異なります。 (参考記事 : 米イェール大学の基金運用事例
不動産は他のアセットクラスにくらべ、流動性、投資先地域毎の法令や費用、資産価値の評価、市場サイクルなどといった固有要素が多く含まれるアセットクラスですが、 天然資源、インフラと並ぶ有限固定資産であり、最大の魅力はインフレーションに強い『インフレ感応資産』である点です。

グローバル市場での不動産とは?

Back to top

 

 

インフレ感応資産とは?

『インフレ感応資産』は日本市場とは真逆に成長するグローバル経済、人口増、アジアの発展といった要素を長期的に、そして最大限に享受できる資産クラスです。 また不動産特有の利点としては、資産の活用をする事により定期的に安定したインカムフローを生み出せる点もあります。

もちろんバブル期の日本市場での例もあるように一つの市場への一極集中は、非流動性資産固有のリスクをともないます。 しかしながら、グローバル市場での複数の特性を持つ市場への分散投資を行う事によっては不動産が持つ最大の魅力であるインフレ成長と着実なインカムフローを享受する事が可能です。

インフレ感応資産とは?

Back to top

 

 

世界の不動産投資トップ30の年金基金・SWF

参考として、世界規模で運用する各国のSWF、年金基金、保険会社などの運用状況を以下に挙げます。

世界のTOP30年金基金、SWF、保険会社の不動産投資 以下は弊社が提携する英国の機関投資家向けオルタナティブ市場メディアのPEREがまとめたリサーチです。

不動産への投資額順に世界のTOP30年金基金、SWF、保険会社をリストアップしてあります。

不動産への投資額、、、名称 / 拠点国 / 属性 / 運用額 / 不動産へのアセットアロケーション(%)を表記しております。

(1) 338億ドル、、、アブダビ投資庁 / アラブ首長国連邦 / SWF / 6,270億ドル / 5.4% 
(2) 335億ドル、、、カタール投資庁 / カタール / SWF / 850億ドル / 39.4%
(3) 257億ドル、、、カリフォルニア州公職員退職年金基金(CalPERS) / 米国 / 公的年金 / 2,426億ドル / 8.9% 
(4) 248億ドル、、、GIC / シンガポール / SWF / 2,475億ドル / 10% 
(5) 240億ドル、、、Allianz / ドイツ / 保険会社 / 6,690億ユーロ / 2.8% 
(6) 229億ドル、、、カリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS) / 米国 / 公的年金 / 1,525億ドル / 14.2% 
(7) 213億ドル、、、ニューヨーク州公共退職者年金 / 米国 / 公的年金 / 1,506億ドル / 6.7% 
(8) 210億ドル、、、ケベック州公共年金基金 / カナダ / 公的年金 / 1,590億カナダドル / 11.5%
(9) 192億ドル、、、ABP / オランダ / 公的年金 / 2,610億ユーロ / 5.7%(目標値9%) 
(10) 180億ドル、、、カナダ公共年金基金(CPPIB) / カナダ / 公的年金 / 1,658億カナダドル / 10.7% 
(11) 171億ドル、、、テマセック / シンガポール / SWF / 1,980億シンガポールドル / 10.6% 、 、 
(15) 158億ドル、、、第一生命 / 日本 / 保険会社 / 約30兆円 / 4.1% 、 、 
(18) 141億ドル、、、AXA / フランス / 保険会社 / 1兆640億ユーロ / 1.5% 、
(20) 133億ドル、、、オンタリオ州公務員年金(OMERS) / カナダ / 公的年金 / 557億カナダドル / 23% 、 
(23) 124億ドル、、、明治安田生命 / 日本 / 保険会社 / 約30兆円 / 3.3%
(24) 114億ドル、、、住友生命 / 日本 / 保険会社 / 約21兆円 / 4.3% 
(25) 110億ドル、、、クウェート投資庁 / クウェート / SWF / 2,960億ドル / 3.7%
(26) 110億ドル、、、PFZW / オランダ / 公的年金 / 1,180億ユーロ / 12.7% 、 、 
(30) 82億ドル、、、NPS / 韓国 / 公的年金 / 367兆ウォン / 2.48%

*投資額は不動産への直接投資、投資ファンドを通じての投資、JV投資の合計額です。 REITや不動産会社の株式への投資、その他不動産関連債権への投資等は含まれていません。

属性別の機関投資家は以下です 
SWF(計5) アブダビ投資庁、カタール投資庁、GIC、テマセック、クウェート投資庁 
年金基金(計17) CalPERS、CalSTRS、ニューヨーク州公共退職者年金、ケベック州公共年金基金、ABP、カナダ公共年金基金(CPPIB)、ワシントン州公共年金、ペンシルバニア州教職員年金、テキサス州教職員年金、オンタリオ州教職員年金(カナダ)、ブリティッシュコロンビア州公共年金基金(カナダ)、オンタリオ州公務員年金(カナダ)、米国カレッジ退職者年金(TIAA-CREF)、PFZW(オランダ)、ニューヨーク州教職員年金、オレゴン州公務員年金、韓国NPS 
保険会社(計8) アリアンツ、ジェネラリ(イタリア)、第一生命、AXA、CNP(フランス)、明治安田生命、住友生命、メットライフ

Source : PERE 『Global Top 30 investors』
世界の不動産投資トップ30の年金基金・SWF

Back to top

 

 

不動産は年金基金やSWF向き

上記の結果から、
世界のTOP30機関投資家の不動産へのアセットアロケーションの平均値は9.1%となり、
機関投資家の属性別では、
SWF(5)の不動産へのアセットアロケーションの平均値は13.8%
保険会社(8)の不動産へのアセットアロケーションの平均値は3.0%
公的年金基金(17)の不動産へのアセットアロケーションの平均値は10.9% となります。
長期的な資産成長やグローバルな分散投資を必要とする中東やアジアのSWF、欧米の先進国の公的年金基金といった、計画的に長期間での運用が可能な投資家からは平均で10%以上のアセットアロケーションがなされている。
一方、他投資家からの資金を預かり区切りをもって運用する保険会社からは不動産に対して全体的に低いアセットアロケーションがなされている事が見てとれます。 同時に保険会社からは今回の統計に含まれず、不動産や不動産私募ファンドよりも比較的流動性の高い不動産関連債権といったアセットクラスには大きなアセットアロケーションがあると思われます。

不動産のアセットクラスとしての利点である『長期でのインフレ感応性』、また特性である『非流動性』が現れた内容であると言えます。
また不動産は『時間を味方にする資産』とも言えます。 欧米の公的・企業年金基金の不動産投資に対する傾向として、独自もしくは運用会社との個別アカウントを通じて給付資金の支払い時期に合わせた超長期の(時には40年といった)投資期間を設定して投資を行っている特徴が見られます。この背景には不動産資産が生み出す家賃収入といった他資産よりも高く定期的なインカムフローを享受しつつも、インフレーションと連動しながらサイクルを持って資産価値自体の上昇(キャピタル・リターン)が見込める各不動産資産に長期にわたり投資できることが年金基金の特性と好合致するという点があります。

SWFにおいても、CIC(中国投資公社)などに見られるように不動産資産に対しての投資期間を10年へ引き上げるなど、不動産資産の特性と利点を十分に享受できるように長期の投資期間を設定する動きが見られる。

不動産は年金基金やSWF向き

Back to top

 

 

日本ではなく海外の不動産へ投資してこそ

日本の機関投資家からは、長らく日本の不動産市場への投資ファンドへの投資が主流でしたが、 インフレよりもデフレ度合いの強い日本での不動産資産はアセットクラスとしての特性を全く活かしておらず、グローバル経済の流れと逆行した投資といえます。 アジアや欧米のSWFや年金基金は積極的に、自国以外のヨーロッパや米国、アジア、南米といった地域へ積極的な不動産投資を進めています。 不動産はグローバル市場で運用する事によって、21世紀の世界経済成長を着実に長期に享受することのできる『インフレ感応資産』として大きな価値のあるアセットクラスです。

弊社では、グローバル市場をメインとした不動産を中心にインフラ、PEファンドの情報発信、リサーチ、投資の取扱いを行っております。 数多くの着実なグローバル運用マネージャーよりファンドの窓口業務を依頼されておりますので、市場・運用会社の比較や情報収集、運用会社への質問等、ご遠慮なくお問い合わせください。 お問い合わせ先: info@japanplacementagent.com 、 、 、 、 その他の海外年金基金・SWFに関してのリサーチなどは弊社のWebサイト www.japanplacementagent.com にて閲覧可能です。

弊社では各国の年金基金やSWF、関係メディアと運用事例や戦略に関して幅広く情報交換を行っております。

日本ではなく海外の不動産へ投資してこそ

Back to top

 

 

本記事について

Edited & written by  Yukihiko Ito (伊藤 幸彦)

Source : PERE 『Global Top 30 investors』

本記事に関しましてのご質問またはお問い合わせはinfo@japanplacementagent.comまでお願いいたします。

過去の記事ではイェール大学、カナダ国民年金基金運用(CPPIB)や中国SWFのオルタナティブ投資事例、インフラストラクチャーファンド事例も取り上げております、ご興味がございます場合はお問い合わせください。

Back to top