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ケベック州貯蓄投資公庫 - Caisse de dépôt et placement du Québec

ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ = The Caisse de dépôt et placement du Québec)はケベック州に所在する計29の公的年金基金、公務員共済基金、公的保険基金の資産を運用しており、 カナダ国民年金(Canada Pension Plan)に次ぐカナダ第2位の資産規模を持つ投資主体。

29の出資者(投資委託者)のうちの主な8つの基金が全体の約97%相当の資金の委託者となっている。

公庫が運用する受給者の純資産は2012年末時点で1,762億カナダドル。1カナダドル=100円で日本円に換算すると17兆6200億円と、日本の企業年金連合会の運用資産の約1.6〜1.7倍にあたる。(2012年末時点での資産を1カナダドル=100円で計算した場合)

設立は1965年で、約1億7,900万カナダドルの運用資産とともにスタートした。その後の1966年から2012年までの47年間で設立当初の約1450倍の 資産を運用/管理する規模までに大幅に成長し、世界有数の公的基金運用機関となっている。

総資産推移

1966年: 1億7,900万カナダドル

1970年: 13億2,100万カナダドル

1980年: 109億6,500万カナダドル

1990年: 373億400万カナダドル

2000年: 1,247億800万カナダドル

2010年: 1,991億3000万カナダドル

2012年: 2,591億3600万カナダドル

*2012年末時点の内訳:1,762億カナダドル(受給者の純資産)+ 376億カナダドル(負債)+  453億カナダドル(関連子会社 が受託運用/管理する不動産資産など)= 2,591億3600万カナダドル

 

資産規模の大幅な拡大の主な要因には、ケベック州貯蓄投資公庫への出資機関(基金受益者)とその運用委託金の増加に依る所が大きいが、47年間の投資活動による資産全体の年間平均リターンは+8.41%と、長期にわたり非常に優秀な実績を挙げている。

また運用開始からの47年間で総資産規模を約1450倍にまで膨大させ世界有数の超巨大基金へと変貌するまでに、時々の基金の規模や目的に沿うように段階的に資産の分散化を進めてきた。ケベック州貯蓄投資公庫の歴史と輝かしい運用実績はこの『分散化』に深く裏打ちされており、その沿革は『分散化の歴史』とも言える。

 

1960年代&1970年代

資産規模: 1966年から1980年までの約15年間で資産規模は1096,500万カナダドルと発足時の約60倍となる。

ポートフォリオ: ほとんどがケベック州政府債などの確定利付証券・債券で構成。

 

1980年代&1990年代

資産規模:  2000年までに1,247800万カナダドルの資産規模を持つ巨大運用機関に成長。発足時の約700倍の規模となる。

ポートフォリオ: 積極的な分散投資を進める。株式への投資比率を増やし、ケベック州外への投資を進め、カナダ株および外国株への投資を行う。不動産やプライベートエクイティといったアセットクラスへの投資を本格化。

 

2000年代~現在

資産規模: 2007年まで好調な運用成績を記録するも、2008年には金融危機 の打撃を受け-25%と総資産の4分の1の損失を計上する。直後から短期的な経済危機の影響を受けにくいより流動性の低い長期投資資産や分散化を進める。2009年は+10%のリターン 、以来年間換算で平均+10.7%のリターンを挙げ2012年末時点の総資産は2,5913600万カナダドル。発足時の約1450倍。

ポートフォリオ: プライベートエクイティ、不動産、確定利付証券・債券、株式などの16に分類される世界中の資産へ投資。

 

過去15年間の投資運用成績

年度 年間リタ−ン
1999 16.5%
2000 6.2%
2001 -5.0%
2002 -9.6%
2003 15.2%
2004 12.2%
2005 14.7%
2006 14.6%
2007 5.6%
2008 -25.0%
2009 10.0%
2010 13.6%
2011 4.0%
2012 9.6%

 47年間のうちで資産に対してのマイナスの投資リターンを記録した年は8回あり、その8年の資産の損失の平均は−6.9%。ケベック州貯蓄投資公庫の47年の歴史の中で最大の損失を計上した2008年は−25%を記録した。

2008年の大幅損失を教訓に2009年7月よりポートフォリオの更なる分散化、長期投資を前提としたプライベートエクイティや不動産、インフラストラクチャーなどの非流動性資産へのさらなる投資といった再構築を行い、以降から2012年末までの 1年間に換算した資産に対しての平均投資リターンは+10.7%(年度毎の4年間の平均は+9.2%)、2012年は+9.6%と、18兆円近い資産を運用する先進国の巨大投資機関としては非常に傑出した運用成績を上げている。

2012年末時点の純資産1,762億カナダドルのうち、約149 億カナダドル(約1兆4900億円)は2012年の純投資リターンによる増加、23億カナダドルは受益者からの運用委託資金の払い込みによる増加となっている。

受給者の純資産の1,762億カナダドルに対して負債が376億カナダドルと非常に健全なバランスシートであるとともに、長期的視点からの分散投資戦略など、財務・運営に関しての評価は非常に高く、Moody’s、Standard & Poor’s、DBRSの信用格付けはAAA(トリプルA)となっている。

ケベック州貯蓄投資公庫 - Caisse de dépôt et placement du Québec

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運用方針

ケベック州貯蓄投資公庫は未来を見据えた長期的な運用方針を持っており、以下の5つの優先的な指針となるテーマを掲げている。

 

・絶対的な収益の追求 【質の追求】

エクイティ(企業)などの投資対象については、市場のインデックスや指標といった要素よりも、経済や将来に対しての合理性・確証性といった要素に重点を置いた高いクォリティの企業へ投資し、投資対象とする企業と長期の深い関係を築きあげ、より優れたゴールを目指す。

 

・非流動性資産への投資 【有形資産をターゲットにする】

長期的な投資 の基礎として、 有形資産(Tangible asset)、実体経済に価値が直接リンクしている資産への投資を行う。

プライベートエクイティ、インフラストラクチャー、不動産といった流動性は低いが実体経済、有形資産といった価値に裏付けされた資産への投資を増加させる。

 

・ケベック州への投資 【最も精通している市場へ投資する】

最も精通している市場への投資とケベック州への地域貢献という側面からケベック州の資産への投資には高い優先順位を設定している。プライベートエクイティやエクイティ投資関連においては、ケベック州の企業とグローバル市場の橋渡しとなる役目を果たす事、ケベック州の次世代の国際的な経済・起業リーダーシップの強化への貢献を目指している。

 

・エマージング・マーケットへの投資 【経済成長へ投資する】

エマージング市場へ投資する事により、エマージング市場の成長の恩恵を経済的に享受する。 深い専門性と知識を持った現地のパートナーを通じて投資する事により市場の理解と投資精度を深める。エマージング市場への投資は直接投資、間接投資投資ともに増加させる。

 

・深い専門性と高いプロセス精度【 専門性と効率化】

内部のポートフォリ運用力の強化、広範な学術的リサーチの運用、各分野の専門性と運営力の強化、リスク管理と投資判断の継続的な統合、効率化に繋がる運用システムやプロセスの改良、といった取り組みを通じて投資・運用の効率を最大化させる。

 

上記の各テーマから、ケベック州貯蓄投資公庫が各資産への理解と専門性を高め、長期にわたって人的・経済的資源をかけていくことにより利益の最大化とリスクの最小化を目指している姿勢がうかがえる。

日本の同様の年金や保険などの公共性基金との共通点は「最も精通している市場で投資する」といった要素くらいではあるが、これも意図や内容には大きな違いがあるのではないだろうか。 「リスクを最小化するには高い流動性」といった日本の基金運用の従来型のセオリーからは真逆ともいえる「リスクを最小化しリターンを最大化するには長期の高いクォリティ資産への資源の集中」といった点が際立った違いとして見られるのではないだろうか。

 

同時に約18兆円の純資産を運用する巨大基金であるケベック州貯蓄投資公庫は、前述の通り長年にわたり『分散投資』として複数の分野への投資を進めている。

次項はケベック州貯蓄投資公庫の投資ポートフォリオと各アセットの役割についてである。

運用方針

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ポートフォリオと運用実績

ケベック州貯蓄投資公庫の投資ポートフォリは以下の3つの主要資産カテゴリーとその他の計4つの資産カテゴリーで構成され、各資産カテゴリ−ごとに資産クラスを分類し、計16の資産クラスに分類されている。

資産カテゴリーと資産クラス

 

・確定利付証券・債券(Fixed Income)

目的: ポートフォリオ全体のリスク減少、基金受給者の資産と負債の調整

資産クラス: 短期債券、中期債券、長期債券、不動産担保債権

 

・インフレーション感応型資産(Inflation Sensitive Asset)

目的: インフレ−ションへの対応、負債のインフレ−ションリスクのヘッジ

資産クラス: インフレ連動債、インフラストラクチャー、不動産

 

・株式およびプライベートエクイティ(Equity)

目的: 長期の目標リターンの増加

資産クラス: カナダ株、グローバル株、米国株、EAFE株(ヨーロッパ、オーストラリアおよび極東)、エマージング株、プライベートエクイティ

 

・その他(Other)

目的: 資産の分散下と他資産の補完

資産クラス: ヘッジファンド、アセットアロケーション(デリバティブ等)、ABTN(担保付きローン等)

 

各資産カテゴリー及び資産クラスへの投資比率、直近のリターンは以下のとおり

 

資産カテゴリ− 資産クラス 投資資産価額 (1億カナダドル) 投資比率 投資方針 2012年リターン/年 過去4年間の平均リターン/年
確定利付証券・債券 短期債券 89 5.1% インデックス 1.1% 1.0%
中期債券 438 24.9% アクティブ 4.3% 7.3%
長期債券 37 2.1% インデックス 3.4% 8.9%
不動産担保債 76 4.3% アクティブ 5.1% 3.0%
640 36.3% 3.9% 6.1%
インフレ−ション感応型資産 インフレ連動債 12 0.7% インデックス 2.7% 12.2%
インフラストラクチャー 63 3.6% アクティブ 8.7% 22.4%
不動産 180 10.2% アクティブ 12.4% 5.4%
255 14.5% 11.1% 9.6%
株式およびプライベートエクイティ カナダ株 220 12.5% アクティブ 6.6% 10.8%
グローバル株 138 7.8% アクティブ 14.0% N/A
米国株 102 5.8% インデックス 13.5% 10.4%
EAFE株 98 5.6% インデックス 15.2% 5.3%
エマージング市場株 87 4.9% インデックス 15.8% 13.1%
プライベートエクイティ 178 10.1% アクティブ 13.6% 14.2%
823 46.7% 12.2% 11.8%
その他 ヘッジファンド 32 1.8% アクティブ 4.7% 6.0%
アセットアロケーション 11 0.6% アクティブ N/A N/A
ABTN 0 (-8) N/A アクティブ N/A N/A
43 2.4% 9.6% 9.2%
計(純資産総額) 1762 100.0%

 

各資産カテゴリー、資産クラスについての詳細は次項をご参照ください

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確定利付証券・債券

確定利付証券・債券 / Fixed Income

確定利付証券・債券へは36.3%のアセット・アロケーション(640億カナダドル=6兆4000億円)を行っており、2012年度は3.9%のリターンを記録した。

ベンチマークには、最も一般的なカナダの債券インデックス・DEXを採用しており、2012年はベンチマーク+0.7%のリターンを収めている。

ケベック州貯蓄投資公庫の確定利付証券・債券ポートフォリオは、

・短期債券

・中期債券

・長期債券

・不動産担保債

以上の4つのアセットクラスに分類され、主にカナダの国債、社債、不動担保債で構成されている。中期債券へはアセットクラス別では全体で最も高い24.9%のアセット・アロケーションがなされている。

不動産担保債を除いた債券全体では、アセットアロケーションの約32%を占めている。
これは日本のGPIF(約70%)や企業年金連合会(約60%)と比べると約半分の水準である。

参考として、その他の主要なグローバル基金ではシンガポールGICは22%、CalPERSは18%、カナダCPPIBは33%、ノルウェーGovernment Pension Fund: Globalが35%、イェール大学基金は4%を債券へのアセットアロケーションに充てている。

ケベック州貯蓄投資公庫のポートフォリオのなかの安定性を担っていると言えるFixed Income(確定利付け証券/債券)のカテゴリーのなかで、最も興味深いアセットクラスは、全体の4.3%のアセットアロケーションがされている不動産担保債(または不動産担保融資を証券化した証券)ではないだろうか。

不動産担保債(証券)はMortgage Backed Security(MBS)と呼ばれ、担保となる不動産資産の種類によりCMBS(C=Commercial/商業)、RMBS(R=Residential/住宅)などに分類される。 ケベック州貯蓄投資公庫の投資する不動産担保債の対象不動産別の割合はオフィス(52.2%)、ショッピングセンターなどの店舗(29.5%)、住居(9.9%)、ビジネスパーク(6.2%)、ホテル(2.2%)という内訳になっており、すべてカナダ内の不動産が対象となっている。うちケベック州の不動産が40.6%と最も高い。(2番目はオンタリオ州の35.6%)

ケベック州貯蓄投資公庫は、不動産担保債の実体経済を反映した資産価値の安定性、固有不動産に価値が依存せずリスクを広く分散化(平均化)できる点、とともに、国債等よりも高いリターンを期待できる有用な資産として評価している。 2012年度の不動産担保債ポートフォリオのリターンは+5.1%と力強い成績を挙げている。

確定利付証券・債券

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インフレーション感応型資産

インフレーション感応型資産 / Inflation Sensitive Asset

インフレーション感応型の資産への投資はケベック州貯蓄投資公庫の長期運用の特徴であり、ケベック州貯蓄投資公庫は最も先進的にインフレーション感応型資産を運用するSWFと言える。 運用資産全体の14.5%(255億カナダドル=2兆5500億円)をインフレーション感応型資産へ投資している。 インフレーション感応型資産全体では2012年度は+11.1%のリターン、過去4年間平均では年+9.6%のリターンをあげている。

アセットクラスは以下の3つに分類されている

・インフレ連動債

・インフラストラクチャー

・不動産

 

インフレ連動債 ケベック州貯蓄投資公庫のポートフォリオのインフレ連動債とはカナダ政府または自治体の発行するReal Return Bond。Real Return Bondの元本はCPI(消費者物価指数)と連動している。 ケベック州貯蓄投資公庫はインフレ連動債の投資ベンチマークは1.1%と設定しており、インフレヘッジを主な目的としている。全体ポートフォリオ内での投資比率は0.7%と控えめであるが、2012年度のリターンは+2.7%とベンチマークを大きく超えている。カナダのインフレーションを反映してリターンのうちの半分は債券自体の価格の上昇によるものだった。 過去4年間の年平均ではリターンは+12.2%を記録しており、16のアセットクラスの中で、インフラストラクチャー(+22.4%)、プライベートエクイティ(+14.2%)に次ぐ3番目に高いリターンを記録している。

 

インフラストラクチャー ケベック州貯蓄投資公庫の全体資産の3.6%にあたる63億カナダドル(約6300億円)の資産を有しているインフラストラクチャー資産は、過去4年間ではケベック州貯蓄投資公庫の16の全アセットクラスの中で最高となる年平均+22.4%の高リターンを生み出している。2012年度単年でのリターンは+8.7%。

 ケベック州貯蓄投資公庫の投資対象となるインフラストラクチャー資産の定義は、

政府や自治体により規制された市場での独占的な地位を持ち、長期的に安定した利用契約と高いキャッシュフローが見込めるインフラ資産および設備としている。
大部分は、空港施設、変電施設、水および電力の供給施設、交通施設、石油やガス関連施設といった施設を運用する会社の株式の取得といった形で投資運用を行っている。
運用方針は10年以上の長期投資を旨としており、戦略的なパートナーとの共同投資を行うケースが多い。経済変動の影響を受けにくい長期で安定した需要の見込める企業および事業への投資を掲げている。

過去4年間の高いリターンの主な要因としては、金利の低下による相対的な資産価値の上昇(インフレーション)を挙げており、2013年からは今後の金利の上昇を見込んだヘッジ戦略を取り入れていく方針としている。

最近の主なインフラ投資事例としては、以下のようなケースがある

・2013年6月、ケベックの風力発電施設の建設・運営プロジェクトへ5000万カナダドル(約50億円)のタームローンを融資。同プロジェクトは電力会社のHydro Quebecへの20年間の長期売電契約が裏付けられている。

 ・2012年4月、フランス大手公共交通機関運営会社のKeolisの株式を追加取得。Keolisの株式はフランス国鉄SNCFとケベック州貯蓄投資公庫が共同保有をしている。(ケベック州貯蓄投資公庫は30%の株式を保有)

・2012年2月よりオーストラリアのPPP事業へインフラストラクチャー投資運用大手のPlenary Groupと共同投資を開始。投資案件にはコンベンションセンター、オーストラリア国防軍宿舎、オーストラリア内の国営病院、警察署および裁判所施設、バイオ農業研究所、ガン研究所などが含まれる。すべての施設はオーストラリア政府関連機関と長期利用契約を結んでいる。

 

また、2012年にはポートフォリオの分散化の一貫として、イギリスのヒースロー空港ホールディングスの株式を含む10億カナダドル(約100億円)の資産の売却も行っている。

2012年末時点での地域別の運用・保有しているインフラストラクチャー資産の内訳、ヨーロッパ(59.6%)、米国(21.1%)、ケベック州(14.7%)、ケベック州以外のカナダ(2.1%)、、、となっており、セクター別ではエネルギー関連(44.2%)、産業インフラ(38%)、電力・水道(14.2%)、通信(1.6%)と続く。

セクター別の投資割合

エネルギー(オイル、ガス等) 44.2%
産業インフラ 38.0%
電力・水道 14.2%
通信 1.6%
消費材 1.6%
ヘルスケア 0.4%

 

不動産 不動産投資はケベック州貯蓄投資公庫の長期の安定した運用の柱となるアセットクラスであり、16のアセットクラスの中では、中期債券に次ぐ10.2%(180億カナダドル=約1兆8000億円)のアセットアロケーションをおこなっている中核となるインフレ感応型資産である。 2012年度は+12.4%のリターンをあげている。 直近の4年間では、リーマンショックの影響を大きく受けたものの、年平均+5.4%のリターン成績を残している。

ケベック州貯蓄投資公庫は、不動産資産は安定した長期分散投資の方法として優れているだけでなく、異なる市場や異なる時間軸の賃貸契約を混ぜることによってインフレーションへのヘッジとして最も有効な資産でありながら、債券(確定利付証券)よりも高い利回りを得られる資産として非常に高く評価している。

ケベック州貯蓄投資公庫の長期安定運用と資産の分散化という目的に不動産は非常に適しており、世界の年金基金やSWFの中でも類をみないほど不動産投資に関しての専門的な投資・運用体制を敷いている。 その最たる特徴として、傘下の不動産投資・運用会社のIvanhoe Cambridgeを通じての世界中での不動産投資が挙げられる。

運用方法には私募不動産ファンドへ投資、直接の不動産開発、不動産取得といった形式が含まれる。

通常、年金基金などの保守的な運用をする基金の投資対象不動産はオフィスが中心となるケースが大部分だが、ケベック州貯蓄投資公庫の不動産投資の特筆すべき点としてショッピングセンターなどのリテール(小売り)不動産が全体の不動産ポートフォリオの約40%と最も大きいセクター別の不動産資産となっている。 消費者物価、インフレーションとの感応性の高いショッピングセンター(リテールおよび小売り)関連不動産への投資は、ケベック州貯蓄投資公庫の運用戦略のインフレヘッジとして非常に適性であり、 ブラジル、中国、カナダ、ドイツ、ロシア、スペイン、英国、米国と世界中の好立地に所在するショッピングセンターへ投資している。 セクター別の運用資産割合は、ショッピングセンターおよびリテール関連不動産(39.9%)、オフィス不動産(30.7%)、不動産私募ファンド(9.2%)、ホテル不動産(7.0%)、住宅(6.6%)、、、となっている。

セクター別の不動産ポートフォリオ

リテール(ショッピングセンター等) 39.9%
オフィス 30.7%
私募不動産ファンド 9.2%
ホテル 7.0%
住居 6.6%
不動産ローン 3.3%
その他 3.3%

不動産資産へは積極的なグローバル分散投資を行っており、傘下のIvanhoe Cambridgeを通じて20ヶ国以上の市場へ不動産投資を行っている。 投資先エリア別の不動産ポートフォリオの内訳は、ケベック州以外のカナダ(32.2%)、米国(24.1%)、西ヨーロッパ(20.4%)、ケベック州(16.6%)、エマージングマーケット(5.8%)、アジア先進国(0.9%)となっている。

投資先エリア別の不動産ポートフォリオ

カナダ(ケベック州を除く) 32.2%
米国 24.1%
西ヨーロッパ 20.4%
ケベック州 16.6%
エマージング市場 5.8%
アジア先進国 0.9%

最近の主な不動産投資事例としては、以下のようなケースがある

 

・2013年4月、Ivanhoe Cambridgeを通じてゴールドマンサックス、グレイスターと共に米国の複数の都市の住居不動産(計27棟:8010戸)、総額約15億米ドル(約1500億円)相当のポートフォリオへ投資。 ケベック州貯蓄投資公庫は、「当該住居不動産は再調達価格よりも安く取得でき、新規住居供給が難しくも今後経済成長が見込める地域にあり、高いキャッシュフローが見込める」と評している。

・2013年3月、Ivanhoe Cambridgeを通じて米TPGとカリフォルニア・シリコンバレーのオフィスビル計73棟のポートフォリオ(約4億ドル=約400億円)を取得。

・2012年12月、Ivanhoe Cambridgeを通じて他2社の共同投資家とともにロンドン中心部の賃貸住宅(計4棟)を取得。

・2012年11月、Ivanhoe Cambridgeを通じてニューヨーク・マンハッタン中心部のAクラス・オフィスビル1411 Broadwayの持分を取得。

・2012年、Ivanhoe Cambridgeを通じてブラジルのショッピングセンターへの投資を活発化。 カナダの国民年金運用CPPIBと共同での複数のブラジルのショッピングセンターの持分の取得を皮切りに、リオ・デ・ジャネイロ、サン・パウロなどの大型ショッピングセンターへ投資。

 

ケベック州貯蓄投資公庫は市場の変化に対応した2013年からの方針として、ヨーロッパの不動産資産のウェイトを減らし、中国といったエマージング市場での不動産投資のウェイトを増やしいく方針を打ち出している。

同時に、不動産、インフラストラクチャー、PE(プライベートエクイティ)といった非流動性資産へのポートフォリオ比率を2012年度末時点の24%から30%へ引き上げる方針を決めており、エマージング市場を中心とした不動産資産投資を更に加速させると見られている。

不動産投資のもたらす、分散投資、長期の安定したインカム、グローバルなインフレーションヘッジといった公的な年金基金運用機関の必要とする要素を最大限に評価・運用していると言える。

インフレーション感応型資産

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株式およびプライベートエクイティ

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その他の資産カテゴリー

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不動産投資

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地域貢献

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ガバナンス

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本記事について

Edited & written by Yukihiko Ito (伊藤 幸彦)

本レポートはケベック州貯蓄投資公庫の開示資料、情報提供、関係者へのヒアリングをもとにAsterisk Realty & Placement Agencyが編集したものです。本レポートの複製および転載についてはAsterisk Realty & Placement Agencyを参照元として明記する事を条件に許可いたします。

SWFについての考察・研究は今後さらに発展する要素と大きな必要性をもったトピックであり、弊社では率先して他機関との連携や協力をおこなって行きたいと考えております。情報提供やお問い合わ等、ご遠慮なくお問い合わせください。

お問い合わせ: info@japanplacementagent.com

 

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