Government Pension Fund Globalとは?

ノルウェーの”オイルファンド”として知られるSWF、Government Pension Fund Global (GPFG)は、

1990年にPetroleum Fundとして設立され、2006年に現在のGovernment Pension Fund Globalへ名称変更された。

2013年3月15日時点で、約4兆1600億クローネ(約69兆円)の資産をもつ世界最大級の投資機関。

運用はノルウェー中央銀行の資産管理部門であるNorges Bank Investment Management(NBIM)が行っている。

 GPFGは、将来予測される高齢化による経済減退や石油・天然ガス収入の枯渇時のノルウェー国民の年金資金等に備えるため、 ノルウェー大陸棚の石油・ガス事業からの国の収入を積み立てている基金である。長期の運用を原則としている。

 約4兆1600億クローネ(約69兆円)の資産は、約500万人の人口を有するノルウェーの国民一人当たりで約83万クローネ(約1380万円)の積立に相当する。

GPFGの資産は2001年より毎年平均で約3000億クローネ(約5兆円)ずつ増加しており、2013年度の予算によると運用資産は2020年には6兆2623億クローネ(約104兆円)に達する見通し。

年金支払いがない?

Government Pension Fund Globalの名から、pension fund(年金基金)=  定期的な年金の受給者への支払いを行う公的年金基金といった属性が想像されるが、GPFGには通常の公共年金基金とは異なり、年金支払い機能(債務)がない。

言い換えると、基金の目的である将来の経済衰退時への備えという目的から、定期的な年金支払い機能を有していない。

代わりに年初残高の 4%相当額を目途に、当該年の政府予算に繰入れるとのガイドラインに基づき、毎年政府予算への支払いを行っている。この特徴は、基金がより効率的に長期運用で利益を最大限にあげるための大きな要因となっていると言える。

Government Pension Fund Globalとは?

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投資方針・運用実績

投資方針
原則として、 ノルウェーの企業・政府関連の資産やノルウェークローネ建ての資産には投資を行わず、海外のノルウェー関連外の資産への投資に特化している。 投資方針の特徴としては、長期の運用、積極的な運用を通じたリターンの最大化が掲げられている。 基本的に資産の所有権・コントロールを自ら確保する方針をもとに投資を行うが、4−5%程度の資金は外部の運用会社への運用委託を行っている。また環境関連への投資も大事な投資方針の1つと位置づけられている。 投資対象外と規定している主な資産として、ノルウェー政府と租税条約を結んでいない(または税制情報開示が困難な)国の未公開株式または投資ファンド、インフラストラクチャー資産(道路、鉄道、港、空港)などが含まれている 。 内部統制や意思決定においては、投資リスク、投資分野、不動産、ビジネスリスク、資産評価、報償の6つの委員会を設定している。

投資運用実績
GPFGは1998年から2012年までの投資運用実績を公表しており、平均すると毎年5%の運用リターンを記録している。(運営管理費およびインフレ調整後のリターンは平均3%)。過去最高のリターンを上げた年は2009年の+25.62%で、最低は2008年の-23.30%。2012年は+13.42%のリターンを記録した。


 

  投資運用リターン(%) 


相対リターン* 
(%) 

1999 12.44 1.23
2000 2.49 0.27
2001 -2.47 0.15
2002 -4.74 0.30
2003 12.59 0.55
2004 8.94 0.54
2005 11.09 1.06
2006 7.92 0.14
2007 4.26 -0.24
2008 -23.30 -3.37
2009 25.62 4.13
2010 9.62 1.06
2011 -2.54 -0,13
 2012 13.42 0.21
*不動産は含まれない
投資方針・運用実績

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投資ポートフォリオ

GPFGの投資ポートフォリオは、株式、債券、不動産の3つに分類される。 戦略上の投資配分は株式に60%、債券に35%、不動産に5% を目標値として定めている。 特筆すべきは、株式の構成比が高い事、そしてなによりも3つの基本アセットクラスのうちの1つに不動産が組み込まれている点である。このことから自国外での運用に特化しているGPFGが、海外市場での長期の運用に不可欠である資産として不動産を評価していることがうかがえる。ポートフォリオ全体の投資対象地域別の投資比率は、資産によりヨーロッパに50-60%、北米に35%、その他(アジア&オセアニア)に5-15%と配分し計35種類の通貨建てになっている。

株式GPFGは世界中の8000社を超える企業の株式を保有しており、驚く事に平均すると世界中の上場株式の1%相当を保有している。 6番目の株式投資先国である日本でも幅広く上場株式への投資を行っており、2012年末時点で実に1200社を超える企業の株式を保有している。1社あたりの株式保有比率の上限を議決権付き株式の10%以内に定めている。 ベンチマークにはFTSE Global All Cap Indexを採用している。 2012年は+18.06%のリターンを達成している。

債券
債券投資に関しては国債70%、社債30%という投資比率を定めており、 国債のベンチマークにはBarclays Global Inflation-Linked IndexとBarclays Global Treasury GDP Weighted by Country Indexを 、社債のベンチマークにはBarclays Global Aggregate Indexを採用している。 2012年は+6.68%のリターンを達成している。

不動産 GPFGは長らく株式、債券のみの運用を行っていたが、長期で海外資産へ投資・運用する原則から、長期運用とインフレ感応といった要素が好合致する不動産は2010年より新規投資対象資産と定めている。 投資方針として投資先市場の大型プレーヤーとの共同投資を行うケースが多い。投資方針として投資先地域とスキームの幅広い分散化を定めている。 投資対象は不動産市場が発展し整備されている市場のオフィスや商業施設。2010年より着実に投資先地域を拡大させ、英国、フランス、スイスでの不動産投資を行っており、英国では王室の不動産資産管理会社のクラウン・エステートとパートナーを組み、ロンドン最大の商業エリアのリージェントストリートの権益の25%を保有、また英国最大の不動産会社ブリティッシュ・ランドとは50/50のJV投資を行っている。 GPFGが現在までに不動産投資で最も力を入れている地域はフランスで、AXAとは50/50のJV投資スキームを通じて、10案件、約61億クローネ(約1000億円)相当の不動産資産を保有している。2013年からは米TIAA-CREFとのJVを通じてアメリカへの不動産投資を開始した。 運用のベンチマークにはIPD(Investment Property Databank)のGlobal Property Benchmarkからノルウェーを除外した物を適用し、最低達成リターンに定めている。2012年は+5.77%のリターンを達成している。

 

 

投資ポートフォリオ

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過去の不動産投資事例

以下は、GPFGが行った主な不動産投資事例、保有不動産および関連ニュースです。(弊社のニュースコンテンツ『Global Real Estate News』の過去記事抜粋)

 アメリカの不動産へ投資(2013年)

■ノルウェーSWF・Government Pension Fund Globalは米国の教職員保険・年金およびカレッジ教職者年金を運用するTIAA-CREFとのJVを組成しの米国の不動産市場への投資を開始した。今回のJVを通じての投資は12億ドル(約1140億円)規模とみられており、投資対象はニューヨーク、ボストン、ワシントンDCのハイグレード・オフィスビルへ投資する。JVの持ち分は501:499で、TIAA-CREFが過半数を保持する。両者とも基金の属性から、長期での運用を投資方針として掲げており、お互いに共通の戦略を持つパートナーとしている。Government Pension Fund Globalは2010年より不動産投資を進めており、イギリス、フランス、ドイツ、スイスのヨーロッパへの投資に続いて、今回のJVを皮切りに米国の不動産市場への投資を開始した。

ヨーロッパでの不動産投資(2010-2012年)

■ ノルウェーSWFとイタリア保険大手がパリで共同投資へ(2012年)
ノルウェーのSWF・Government Pension Fund Globalとイタリア保険大手のGeneraliはJV形式でパリのコア不動産へ共同投資へ。投資スキームは、現在Generaliが保有するパリのオフィス・リテール不動産5物件を計5億5000万ユーロ相当(約550億円)でJVが取得する形式となる。JVの持分は50/50。Government Pension Fund Globalはフランス保険・運用大手のAXAとも同様のスキームでパリの不動産投資を数回に渡り行っており、ここ2年の間に計10億ユーロ近い共同投資を行っている。

■AXAとノルウェーSWFがパリのオフィスビルへ共同投資(2011年 )
仏・保険会社大手AXAとノルウェーの政府系SWFのGovernment Pension Fund Globalは、JVによる共同投資でパリ中心部のオフィスビル計3棟を2億9000万ユーロ(約300億円)で取得へ。両者は2011年7月にも約7億ユーロ(当時約820億円)の大型JV投資を行っている。

■ノルウェーSWFがAXAからパリの不動産ポートフォリオの持分取得・共同投資(2011年)
ノルウェーSWFのGovernment Pension Fund Globalは、仏・保険会社大手のAXAから、AXAがパリ市内外で保有する主にオフィスビルで構成されるポートフォリオを保有するAXAとの新規JVの持分50%を取得。取得価格は約7億ユーロ(約820億円)でポートフォリオ全体の延べ床面積は15万6000平米。

■ロンドン・リージェントストリートの権益取得(2010年)
ノルウェーSWFのGovernment Pension Fund Globalが約4億5千万ポンド(約590億円)でロンドンのリージェント・ストリートの150年間の賃貸権益の25%取得。

 

 

過去の不動産投資事例

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本記事について

Source : Norges Bank Investment Management / 在ノルウェー日本国大使館

Edited & written by  Yukihiko Ito (伊藤 幸彦)

本記事に関しましてのご質問またはお問い合わせはinfo@japanplacementagent.comまでお願いいたします。

過去の記事ではイェール大学、カナダ国民年金基金運用(CPPIB)や中国SWFのオルタナティブ投資事例、インフラストラクチャーファンド事例も取り上げております、ご興味がございます場合はお問い合わせください。

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