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By アンナ・マレー
ベントール・ケネディ社(米国・カナダ)
国連環境計画・金融イニシアティブ (UNEP FI) プロパティ作業部会 共同議長

 

国連によると、世界の温室効果ガスの1/3はビル(建物)からによるものです。持続可能な手法によるパフォーマンスの改善の機会が確実に存在することに加え、このような取り組みが、健全かつ生産性のある労働環境を生み出す根幹にも対応することが可能です。

米国環境保護庁(EPA)による調査によれば、アメリカ人は90%以上の時間を室内で過ごすことが分かっています。このことから、私たちが居住し、労働し、遊ぶためのビル(建物)は、私たちの健康やウェルビーイングに多大なる影響を与えており、高性能かつ持続可能なビル(建物)が課題に立ち向かい、 解決の糸口となる環境を創造しています。

 

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カナダ・オタワにあるザ・サン・ライフ・ファイナンシャルセンターは、カナダの首都に建設された初のLEDD-EBプラチナム・BOMAベストプラチナム認定ビル建物で、運営費用の低減化とビル効率の向上を実現。現在、多くの一流企業や事業所をテナントとして惹きつけている。

 

持続可能なビルや建物は、エネルギー効率といった要素を越え、健康的かつウェルネス的要素をもたらす存在であり、生産性、革新、従業員満足度の向上を目的としたフィットネスルームや屋上庭園を備えています。

ベントール・ケネディ社では、運用するビル(建物)のウェルネス向上を目指す場合、健康的かつ魅力的で、生産性の高いスペース空間を備えたコミュニティによるウォーカビリティ(徒歩性)やトランジット(交通利便性)スコアの高い社会的施設を提供する事により、テナントへの長期的な訴求を行うことを目指しています。

このような取組みは、ビル(建物)におけるカーボンフットプリントの削減に全力を投じながら、同時に私たちの健康や生活の質の改善へも影響を与えています。テナントやその従業員が快適さを感じ、健康やウェルネスに特化した施設へのアクセスが便利であるほど、彼らはより生産的でクリエイティブである傾向が見られます。

企業において従業員は自身の健康やウェルビーイングにおける目標を支援できる施設を備えた職場環境を求め始め、とりわけミレニアル世代は、都会における『住む、働く、遊ぶ』を備えた環境に強く惹きつけられています。その結果、持続可能性を備えたビル(建物)を優先的に選択し始める先進的な企業が徐々に増え、優秀な人材を繋ぎ止めることができる持続可能なコミュニティに拠点を構えるようになりつつあると世界グリーンビルディング協会(the World Green Building Council)は報告しています。

テクノロジー・ヘルスケア・教育などの革新的分野における優秀な人材は、彼らの価値を共有したり反映している企業文化で働きたいとする傾向があります。このような人材は 都会的なライフスタイル環境や、グリーンスペース・自転車専用道路・公共交通機関への便利なアクセス・電動自転車の充電拠点といった施設が整い、歩行者にやさしい都市計画を備えた労働環境やコミュニティを求めています。

 

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米国ニューヨーク・ルーズベルト島の緑豊なウォーターフロントのレジデンス「ザ・オクタゴン」は、2006年竣工、14階建の現代的な建物で、八角錐ドーム型の円形建物が目印の高級賃貸レジデンス

 

米国環境性能評価システム(LEED)・ビル所有者管理者協会(BOMA)BEST・エナジースター(省エネルギー型電気製品のための環境ラベリング制度)といったグリーンビルディング認証は、基準を定量化でき、ビル(建物)が持続可能な設計であることを証明するものです。グリーンビルディング認証は重要であると同時に、持続可能性の基線測定でもあります。評価されるに値するビル(建物)に求められる要素とは、人々や私たちの地球の双方にとってのウェルビーイングをしっかりと可視化できる様々な施設です。

ルーフトップ庭園といった自然光や外部スペースを効果的に活用したビル建物や、地元主導型の健康的なレストランを数多く備えた汎用性の高い室内外スペースは、アーバン・ライフスタイル環境を求める従業員に高く評価されています。

このような施設は、テナントを長い間惹きつけ定着させるのに有効であり、グリーンビル設計に基づいた建物は、居住者をより健康的かつ生産的へ導くというレポートが多く見られます。世界グリーンビルディング協会によれば、自然光のある職場、熱的快適性、清掃の際の洗浄剤による汚染物質を最低限に抑えることで、常習的欠勤者を減らし、従業員満足度の向上を促進するとしています。最近発表されたハーバード大学の研究はこの考え方を強固に裏付けており、従来型の環境と比較して、グリーンビルディングのテナントの従業員の認知効率はスコアが61%も高いことが測定されています。

ビル(建物)が健全かつウェルネスに基づいて設計されているかを証明する、世界的に認められ高い影響力のあるFitwell(フィットウェル)といったビル建物のウェルネス認証やWELL認証は、労働環境においての健康やウェルネス戦略を助長させるツールを提供します。フィットウェル認証システムは個人やコミュニティの健康を支えるためのビル(建物)の設計やオペレーションを改善する枠踏みに特化し、一方WELL認証システムは、人々の健康やウェルビーイングを支えるための設計や建設における最良事例(ベストプラクティス)を提供しています。ベントール・ケネディ社は、2017年公式フィットウェル・チャンピオンとなり、ビル(建物)のウェルネス戦略に正式に取組んでいます。

米国ニューヨーク・ルーズベルト島にあるオクタゴンは500戸を擁する住宅ビルで、太陽熱や燃料電池技術で温室効果ガス排出量を低減し、暖房には廃棄物の副産物を利用しています。このようなシステムに加え、環境保護公園、プレイグラウンド、自転車専用道路、地下鉄やトラム乗り場までの特急バスといった健康やウェルビーイングに特化した施設も備えています。

カリフォルニア州オークランドにあるレーサム・スクエアはブティック型オフィスです。このビルは2017年にLEED EB : O&Mプラティナム認証を受け、現行で最も高い評価の持続可能オペレーションを備える唯一のマルチ・テナントビルとなりました。人々が気軽に集まるスペースやコーヒーバー、会議室、テナントが健康やウェルビーイングを体感できるラウンジを備えたロビー階の改修も2017年に完了しました。

ビル・建物デザインやオペレーションにおいての健康やウェルネスといった要素への注目が高まることで、企業における人材の採用、定着性、生産性に関する課題克服への機会が生まれます。これらの課題を解決することにより、テナントの職場環境に対する忠誠心・愛着心を高め、建物の陳腐化を削減することができます。

環境構築における健康やウェルネスへの真摯な取り組みは、シンプルながらも影響力のある困難な課題の解決を支援します。環境にとって良い行いをすることに加え、テナントやその従業員にとって健全で生産的な環境を創造することは、投資家にとっても健全で持続可能な価値を提供します。

 

Anna Murray / アンナ・マレー
Bentall Kennedy サステナビリティ部門 ヴァイスプレジデント
国連環境計画・金融イニシアティブ (UNEP FI) プロパティ作業部会共同議長

 

ベントール・ケネディ社は、グローバル不動産投資アドヴァイザリー最大手の一つであり、持続可能な不動産運用における世界的リーダーです。

 

当レポートはアスタリスクが翻訳・編集したものです。
当レポートの英語版(オリジナル)は、
 ベントール・ケネディ社のコーポレートサイトに掲載されています
https://www.greenbiz.com/article/green-buildings-boost-health-productivity-and-value-investors

 

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