グローバル不動産レポート (カナダ)

 

カナダは世界的にも最も不動産投資市場が機関投資家向けに整備されており、かつG7参加国中で最も高い人口増加率、そして継続的な経済成長が期待できる市場です。

カナダの優良コア不動産の多くは、カナダ国内や世界的な年金基金に広く所有されています。また近年、分散投資先として多くの海外機関投資家が目を向け始めており、日本の機関投資家からの注目を集め始めています。

 

当ニュースレターでは、カナダの不動産市場の2019年の見通しについて、弊社がコンサルタントを務めるベントール・ケネディ社のレポートをご紹介いたします。

 

2019年のカナダ不動産市場を形成する4つの特徴 - FOUR FACTORS THAT WILL SHAPE REAL ESTATE IN 2019

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経験豊富な投資家達は、集合住宅、産業用・商業用不動産市場の転換点に注目

 

カナダの不動産市場へは多くの機関投資家の資金が集まってきています。

2018年度第三四半期までのカナダ商業用不動産の取引高は380億ドル超に達し、2017年度に記録的となった430億ドルを上回る様相を見せています。

世界的に見た場合、2018年は機関投資家が商業用不動産分野への投資にますます踏み込み、公的年金、保険会社、その他の機関投資家達は、2兆5300億米ドルをこれらのアセットに分配しているとオルタナティブ投資市場の調査会社であるプレキン社が報告しています。また、ベントール・ケネディ社が発表した最新レポート2019年カナダ不動産市場概況(The Perspective 2019)では、GDP成長が緩かになっているものの、カナダの不動産ファンダメンタルは引き続き活況な状態が続くと予測しています。不測の事態がなければ、現在のアップサイドおよびダウンサイドリスクによる実質的な影響が、2019年のカナダ経済にとって有益になるとしています。   

機関投資家にとっての商業用不動産への重要性が高まっていることを鑑み、2019年度の市場概況の4つに特徴付けて解説したいと思います。

1. 堅調な経済成長が不動産需要を下支え

ベントール・ケネディ社の2019年カナダ不動産市場概況(The Perspective 2019)では、世界的に見た経済成長性は直近2年間の各年度で概ね同等レベルの3.7%であるが、世界的な貿易リスクは依然留まる状況と予測しています。

ベントール・ケネディ(カナダ)社の社長および最高投資責任者ポール・ゼムラは「不動産への強い需要は、堅調なビジネスや消費者意欲に支えられており、当社は労働市場による全国の空室マーケットに対する直接的な影響という部分に注目しています。近年堅調な雇用成長が見られるカナダでは、雇用成長が今年のある時点で鈍化したとしても、カナダ経済は着実に優秀なフルタイム社員の雇用を創出し続けるでしょう」と述べています。  

世界の経済専門家達は、好調な米国経済の光と影、他国の経済の停滞から生じる潜在的なストレスを懸念しつつも、カナダは、米国・メキシコ・カナダ協定において、同国の成長性に重大な影響を及ぼすダウンサイド・リスクを取り除くことで、隣国の繁栄から恩恵を受けてていると見ています。2019年に直面するカナダ最大の課題は、上昇する金利に対する消費者の高い負債水準に加え、記録的な低失業率も相まって、優秀な労働人材の不足が挙げられます。

 

2. 不動産サイクル後期において、オペレーショナル能力は差別化を創出
 

ベントール・ケネディ社の2019年カナダ不動産市場概況(The Perspective 2019)では、カナダアルバータ州のオフィス市場が過去タイ記録に近い高空室率に頭を悩ませていることや、いくつかの二次および三次小売店舗などが不調なことを除き、全体的にカナダの不動産ファンダメンタルズが2019年度も堅調に推移を続けるとみられます。この環境下における優れたNOIの創出は、オペレーショナル・エクセレンスの確立にかかっていると言えるでしょう。 

「サイクル成熟期における不動産運用は、サイクル初期の拡張期と状況が大きく異なります。サイクル初期は金利低下がキャップレートの下落を扇動するため、失策の影響が少ない場合は、物件価値の上昇につながるものですが、そのタイミングは既に去ってしまっています。」(ゼムラ氏)

「現在、投資リターンはインカム主導の方向で推移しています。これは、建物が満室となり、その収益が確保され、さらに成長が期待できることを証明していると言えます。クオリティ付勢を維持することで、明るい成長見通しや優れた流動性を確保でき、市場とは好意的に働くと考えられます。また、付近に移動交通網や様々な施設があり、それらが持続可能な特性を備えているとなれば、今後も生活者や居住者にとって魅力的な物件となる事でしょう。」(ゼムラ氏)

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3. 産業用不動産(物流施設)において「最後の1マイル」は最も困難な1マイル

「卸供給物流チェーンは変化しています。私はこれまで皆さんに、生産側と消費者間には時短が求められており、産業用不動産の将来はトラックに委ねられていると話していたのですが、生産側と消費者との間には、未だに不動産が必要とされているということに気が付きました。」

「そして、兼ねてから根強い需要のある産業用不動産(物流施設)は2019年も堅調に成長し続け、その大部分はEコマースの拡大に伴うスペース需要によるものです。これは、インバウンドの物資供給側とアウトバウンドの都市部居住者の双方にとって最適な環境すなわち『ラストマイル』と称される最終拠点からエンドユーザーへの物品搬送の中核部分と言えます。物流施設は華美である必要も巨大なコンテナを格納する必要もありません。最も重要な事は、都心部居住者に近く、また、そこで勤務する人々にとって交通の便が良いという点です。終末端間費用は配送費用の約半分を占めることから、企業各社は、物流用インフィル物件の戦略的配置に余念がありません。」とヨーク大学シューリックビジネススクール・ブルックフィールドセンターで、不動産とインフラ構築の教授兼ディレクターを務めるジェームス・マッケラー氏は述べています。 

ベントール・ケネディ社の2019年カナダ不動産市場概況(The Perspective 2019)には、周辺郊外と比較したトロント中心部のダウンタウンから車で30分圏内のインフィル物流不動産物件に関する内容が含まれています。つい2年前までは、中心部に隣接する物件に対しての賃料のプレミアムは殆ど見られませんでしたが、今となっては状況が逆転していると当社は見てています。強い需要に対し供給不足の状況であることから、インフィル物流不動産の賃料へのプレミアムは今後も引き続き期待されています。物流不動産の空室率は、バンクーバーやとトロントにおいても記録的な低さで、カナダの主要大都市の多くにおいても同様の状況となっています。 

 

4. 住宅賃料は上昇、賃貸住宅スタイルの台頭

賃貸住宅市場は、2019年に再び強いパフォーマンスを見せる勢いがありますが、多くの投資ポートフォリオにおいて、賃貸住宅物件は依然低い位置づけとなっています。賃貸物件への大きな需要は、移民や活況な労働市場に牽引された堅調な人口増加に後押しされています。住宅購入の手頃感(アフォーダビリティ)は下がっており、初めて住宅を購入する人には困難な状況と言えます。ゼムラ氏によれば、このような場合は賃貸市場を去る人は殆どおらず、住宅を購入しての自己居住ではなく、より賃貸を選ぶようになると考察しています。

カナダ不動産協会(REALPAC)の最高経営責任者マイケル・ブルックス氏はこの傾向について、「GTA(大トロント圏)やバンクーバーというカナダで最も高額な2つの市場において、賃貸用に転用される分譲住宅の新規供給が増加し大半を占めようとしているのに対し、賃貸を目的に開発された賃貸住宅物件の市場シェアが劇的に減少している」と考察しています。

このような変化があるにも関わらず、ブルックス氏は「賃貸専用物件はこれまでで最も優れた不動産商品である」と述べ、賃貸住宅物件の運用実績には好意的な見通しを持っています。2018年第三四半期の モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルならびにカナダ不動産協会による不動産指標MSCI/REALPAC Property Indexによれば、2018年9月までの12ヶ月間の集合型賃貸住宅セクターのリターンは12%となっています。

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関連資料

 

– カナダ不動産投資市場の見通し2019年版(Canada Perspective 2019)

ベントール・ケネディは、カナダで有数の大手不動産プレーヤーとして長年、不動産運用をおこなっております。様々な戦略の運用を行っており、海外機関投資家にとってカナダの優良不動産へのエクスポージャーをもてる稀有な機会を提供しております。また海外の機関投資家向けに定期的に不動産投資市場のレポートを発行しております。ファイルサイズの関係上、以下に直近のレポート(Canada Perspective 2019)のダウンロードリンクを添付させていただきます。

https://www.bentallkennedy.com/pdf/perspectives/BKPerspective_Real_Estate_Canada_2019.pdf

– トロント&バンクーバー 機関投資家向け不動投資市場情報(月刊プロパティマネジメント)

月刊プロパティマネジメント誌の2019年2月号(1月末発刊)ではトロントの、2019年4月号(3月末発刊)ではバンクーバー(予定)のカナダの2都市の不動産市場についてのアスタリスク(弊社)とベントール・ケネディ社の記事が掲載予定です。

ぜひご照覧ください。

トロントについての記事は以下リンクよりダウンロードいただけます。

 

第14回 トロント『海外不動産投資 – 注目の都市、妙味ある街 』

https://japanplacementagent.com/en/files/2019/03/Toronto-No14-PMM.pdf

PMM Toronto[2]

 

 

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