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世界最大級の公的年金ノルウェーGPFG、不動産へのアセットアローケーションを15%へ拡大提言

2015年11月12日

100兆円規模の世界最大級の公的年金として知られるノルウェー・Government Pension Fund Global (GPFG)を運用するノルウェー中央銀行の資産管理部門であるNorges Bank Investment Management(NBIM)は2015年11月に”The Diversification Potential Of Real Estate (不動産投資運用の分散化余地に関する討議書)”をリリースしました。
当討議書では様々な学術的調査をもととした調査結果として、不動産へのアセットアロケーション目標を現行の5%から15%へ拡大させる意義を示唆しています。

 

討議書の主なポイント

 世界中の富の大半は不動産資産で構成されているが、投資対象となる範囲は限定的である。多くの専門的な考察によると、グローバル・アセットポートフォリオでの不動産への最適な資産配分は10%~15%と試算される。
NBIMの資料によると、現状の世界的な大型機関投資家の不動産への平均的なアセットアロケーションは保険会社が9.6%、公的年金が9.9%、SWF(政府系投資ファンド)は10.8%となっている。

 多くの学術的なリサーチの結論として、ミックス・アセット(複合資産)ポートフォリオに不動産を加える事によりリスク調整後リターンの改善と多様性によりポートフォリオの強化に繋がる。参考リサーチの中間値として15%の不動産への資産配分が提案されている。

 不動産へのエクイティ投資の手法としては、直接投資と上場不動産株または私募不動産ファンドによる投資に分類され、長期でのリターンにおいては直接投資と上場不動産株投資は類似した結果になるが、短期での運用においては大きな違いがあり、上場不動産株は株式市場の動きにより連動した動きが見られる。またグローバルに投資する上では、上場不動産株の市場が整備されている市場は限定されている。

 直接不動産投資のリターンを解析するにあたっては幾つかの評価手法があり、鑑定評価による手法は最も一般的ではあるが平滑化され過ぎる傾向がある。ボラティリティを計ることができる平滑化されない評価方法を用いることが現実的なリスク評価といえる。

 先進国不動産市場での歴史的リターンは国によって様々であるが、2000年~2013年の期間においてみれば平均して年間7%~9%の名目リターン、5%~7%の実質リターンを記録している。しかしながら、近年はリターンは減少傾向である。平均したリターン水準と平滑化しない評価によるボラティリティの面においては、不動産は国債と株式の間に位置するアセットといえ、どりえあかというと国債に近い性格を持っている。

 不動産リターンの株式や債券との低い相関性は、不動産をミックス・アセット(複合資産)ポートフォリオに加えるうえでの鍵となる要素である。しかし、この低い相関性という要素は非上場不動産に当てはまるケースであり、上場不動産株(REITなど)においては高い株式市場との相関性から当てはまらない。上場不動産株と株式市場との相関性は一定ではなく、また明確な実証が十分ではないが、市場に急激な変動がある時においては相関性が高まる傾向が見られる。

 直接不動産投資には幾つかと資産固有のリスクがともなう。大型のポートフォリオを形成することでリスクの軽減化は可能であるが、これらのリスクを完全に消し去ることは難しい。

 非上場不動産市場への投資は、株式や債券にくらべ格段に低い流動性をともなう。また、長いデュレーションにともなう不確実性や売却プロセスもリスクといえる。長期投資においてはリスクは限定的となるが、短期投資においてはリスク・リターン性向への影響は少なくない。

 一般的に不動産賃料はインフレーションに連動するため、不動産投資からのリターンは自然なインフレーション・ヘッジと言える。多くの学術的な研究では、インフレーション・ヘッジの手法として非上場不動産投資は有効ではあるが、上場不動産投資においては有効ではないという結果となっている。

 非上場不動産は固有の特徴とリスクを持った資産であり、株式や債券と分離した性格を有している。この点は全体ポートフォリオを構築するうえでのファンダメンタル要因として非常に有用である。

英語原文 (The Diversification Potential of Real Estate)
http://www.nbim.no/contentassets/6f7dc4d09cd94c10b76906442e6e1549/nbim_discussionnotes_1-15.pdf

 

GPFGについての背景及び解説 (アスタリスク調べ)
ノルウェーの”オイルファンド”として知られる公的年金、Government Pension Fund Global (GPFG)は、1990年にPetroleum Fundとして設立され、2006年に現在のGovernment Pension Fund Globalへ名称変更された。運用はノルウェー中央銀行の資産管理部門であるNorges Bank Investment Management(NBIM)が行っている。
GPFGは、将来予測される高齢化による経済減退や石油・天然ガス収入の枯渇時のノルウェー国民の年金資金等に備えるため、 ノルウェー大陸棚の石油・ガス事業からの国の収入を積み立てている基金である。長期の運用を原則としている。
GPFGは2015年9月末時点で約7兆160億クローネ(約100兆円)の運用資産を持ち、不動産へは2010年より投資を開始し毎年約4200億円~7000億円相当を外国債から不動産へ転換しており、現在は運用資産の3.0%が不動産に投資されている。
GPFGのポートフォリオは原則として外国資産のみで構成されているが、現在の目標ポートフォリオモデルでは株(60%)、債券(35-40%)、不動産(5%)となっており、他国の大型公的年金基金に比べ日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)とはアセットクラスごとのポートフォリオモデルおよび資産規模の面での類似性が高い。
GPFGの目標ポートフォリオの変更にはノルウェー政府の承認が必要であり、NBIMは現在新たにインフラストラクチャーおよびPEをGPFGの投資対象資産として組み入れるべく、ノルウェー政府に承認の働きかけを行っている。

ノルウェー・Government Pension Fund Global (GPFG)についての過去レポート(2013年3月)
http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/norway-swf-government-pension-fund-global/
Statfjord

 

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Edited & written by Yukihiko Ito (伊藤 幸彦)

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過去の関連リポートは以下リンクからご覧になれます

欧州大陸 : 不動産投資についての考察 – M&G Real Estate
http://japanplacementagent.com/wp-content/uploads/2015/10/52eee65c138da3475162613beaf0518b.pdf

グローバル・コア不動産投資についての考察 – M&G Real Estate
http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/global-core-real-estate-investment/

欧州QE (量的緩和) がもたらす欧州不動産市場へのインパクト – M&G Real Estate
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長期インフレ連動型インカム – 英国ロング・インカム型不動産
http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/long-income-real-estate-investment-uk/
 
英国の私募REIT(オープンエンドファンド)と不動産市場
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インフレーション感応型資産としてのグローバル不動産
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ケベック州貯蓄投資公庫のオルタナティブ投資
http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/caisse-de-depot-et-placement-du-quebec/

SWFレポート2013 / Sovereign Wealth Fund Report 2013
http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/2013-sovereign-wealth-fund-report-2013/
 
ノルウェーSWF “オイルファンド” Government Pension Fund Global
http://japanplacementagent.com/blog/alternative-investments/norway-swf-government-pension-fund-global/
 
米イェール大学の基金運用事例
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グローバル市場での不動産とは? 世界のトップ30の年金基金・SWFの投資動向
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